研究内容




本領域の目的

 スピントロニクスの発展の中で、新たな物理概念として、スピンの流れ、すなわち「スピン流」が登場した。一般的にスピンの注入あるいは蓄積という現象を通して生成したスピン流は、緩和と拡散を通して消滅する。スピン流の生成と消滅は他の物理量との変換を伴うので、適当な物理信号(磁気、電気、光学的信号など)によってスピン流を制御することができ、逆にスピン流によって物理信号の制御をすることもできる。

【キーワード】
・ スピン:電子の持つ固有の属性の1つで、自転の角運動量に相当するものであり、物質の磁気の根源でもある。
・ スピントロニクス:電子の電荷だけではなく、スピンも利用した、新しいエレクトロニクス。


 本領域では、スピン流の生成と消滅、そしてそれらを通して生じる物理信号との変換・制御に関する学理を確立し、新規な機能デバイス応用への可能性を探索することを目的としている。


本領域の内容

 本領域では、内容を(1)スピン流の創出、(2)スピン流と物性、(3)スピン流と機能制御、の3つに区分し、金属と半導体、あるいは物理学と材料学と電子工学といった既存分野の枠組みを超えた連携組織によって研究を推進する。スピン流の創出では、スピン流の元となるスピン源の探索と創製、およびスピン源から効率よくスピン流を抽出・生成するための原理と、ナノへテロ構造や界面制御に関する研究を行う。スピン流と物性では、スピン流と光との相関によって生じる諸物性、およびスピン流と電子との相関によって生じる諸物性、特にスピン流と電子の運動や磁気モーメントとの相関の研究を行う。スピン流と機能制御では、スピン流に関わるさまざまな物理信号の制御や変換に基づく機能性を探索し、新規なデバイスの提案とデモンストレーションを行う。




期待される成果

 分野横断的な連携研究によるスピン流の学理の解明を通して、新たな学術的融合領域分野が創出されることが期待できる。また、波及効果として、次世代を担う革新的なデバイスの実現につながることが期待される。