「固体化学」研究の歴史

京都大学化学研究所における「固体化学」研究は1963(昭和38)年、故 高田利夫教授を中心とした研究チームが酸化鉄微粒子に関する研究を開始したことに始まります。

液相反応、固相反応、気相反応を駆使して合成された多くの遷移金属酸化物や水酸化物に関する研究は、学術上のみならず産業上も非常に重要な価値をもつものです。一連の研究からは、化粧品、顔料、オーディオ・ビデオテープ、磁気ヘッド、黒色トナー粉、重金属排水処理システムなどが実用化されました。名陶・柿右衛門の赤絵に関する研究から、最近では備前焼模様「緋襷(ひだすき)」の生成過程に関する研究など、科学と芸術を結びつける興味深い研究例もあります。



高田利夫教授と
高田研究室のあった吉田キャンパス内の建物

その後、合成手法や評価手法の進展により、全く新しい物質合成手法である人工格子の研究へと進展します。これは、金属や酸化物などにおいて原子層スケールで制御された人工物質を合成し新しい機能を見い出そうとするものです。1982(昭和57)年に新庄輝也教授を中心とする研究チームが金属材料で、1984(昭和59)年には故 坂東尚周教授を中心とする研究チームが酸化物材料で、世界に先駆けて人工格子薄膜の作製に成功しています。
高田研究室、坂東研究室は高野研究室へと引き継がれました。 高野研究室では、1986年の高温超伝導酸化物の発見以降、新材料の探索に数万気圧下で物質合成を行う高圧合成法を取り入れました。非平衡相まで物質探索の範囲を広げることにより、数々の高温超伝導酸化物、低次元スピン物質などの新物質を発見しています。また、異常高原子価と呼ばれるFe(+4)を含んだような酸化物の合成にも成功しています。



坂東尚周教授(左)
高野幹夫教授(右)

島川研究室は高田利夫教授、坂東尚周教授、高野幹夫教授と続いてきた新しい物質を探索する物質合成研究を基盤にして、新しい機能性材料を創出していこうとしています。

2007年度より京都大学大学院 理学研究科「固体化学」分科を継承
2008年11月より附属元素科学国際研究センター「無機先端機能化学」研究領域へ配置換え
2016年4月より元素科学国際研究センターの改組に伴い、「先端無機固体化学」研究領域へ領域名を変更

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